「背椎疾患に対する中国鍼、按摩による治療効果の研究」

           崔邁1)佐伯律子2)

  1)(財)ヘルス・サイエンス・センター中西医結合研究所

  2)佐伯鍼灸治療院

                 要約 

 本研究での脊柱疾患とは頚椎症・頚椎の鞭打ち損傷・変形性腰椎症・ 椎間板症・(腰椎)椎間板ヘルニア・腰椎すべり症・腰椎仙骨化及び椎体骨折 などの疾患を指し,患者の頚部・上肢,或いは腰部・下肢の痛みや痺れ、運動障害 などの症状を招き,酷い場合は生活や仕事を影響する。

 本研究は60例を対象にした。彼らを三つのグループに分け,それぞれに夾脊穴鍼刺療法、対症療法、夾脊穴鍼刺・按摩併用療法で治療し,知覚異常の痛み、痺れの症状を観察指標としてその程度をスコアにし,患者(本人がどんなグループにいるかをしらせず)に治療前と1回治療を受けた三日後の症状の程度(点数)つけてもらい,それらの効果について比較、検討をした。

 結果:1.対症療法群で治療前後症状の変化が見られないことに対し,夾脊穴鍼刺療法は脊椎疾患の症状に対し有意な治療効果が見られた*。2.夾脊穴鍼刺・按摩併用治療群では治療前後の有意な治療効果が見られたが,夾脊穴鍼刺群との間に治療効果の群間比較の差が見られなかった。

*夾脊穴鍼刺治療群20例では全例痛みを持つ患者であった。痛みのスコア(n=20)は治前3.50±0.69であり,治療を受けた3日後には,1.40±1.19になり, 有意な変化が見られた(P<0.01)。20例中,痺れを持つ患者が7例であった。痺れのスコアが治療前後それぞれ2.86±1.07、1.28±0.44であり,治療前後有意差が 見られた(P<0.05)。

症状のスコア:5点:症状がかなりつらくて仕事、生活に影響する。

       4点:症状がつらい。

       3点:症状が気になる。

       2点:少々気になる。

       1点:気にならない。

       0点:症状がない。

 

《医道の日本》第674号(平成12年5月号)2000年P68~77

 2000年第24回代田賞奨励賞授賞論文